俳句吟行記(平成18年)
<<吟行記目次へ
福井吟行旅行(18.6.30-7.2)
「伊吹嶺」校正部の福井吟行旅行に同行させて貰った。1日目に栗田先生が俳人協会創立45周年記念北陸俳句大会で講演なさるのでそれに便乗した結果となった。
メンバーは校正部全員と東京熱心4人組などで総勢17名。
1日目の行程は左内公園(芭蕉宿泊地跡)、北の庄城址、俳句大会参加、福井城址。その後料理屋で句会。さらに精力的に夜は夏越の形代流しを見に行った。
俳句大会では事前投句で2句しか投句していないのに、3句も秀逸というおかしな成績。するとそのうちの1句は私の句だと妻から苦情が入り、大会運営者のミス。
2日目は大野市の朝市、イトヨの里、古九谷の窯跡のコースで、夜は山中温泉の豪華老舗旅館の泊まり。このうち古九谷は栗田先生がかって『俳句とふるさと』の取材で訪れたところであったがすっかり窯跡の面影はない。
藪かげに去年の雪ある古窯跡 やすし
はその時の1句。
この夜も句会を行ったが、私は大吟醸を飲み過ぎた罰が当たって、成績不振。
3日目は斉藤実盛関連の遺跡めぐり。首洗池、実盛塚、実盛の兜のある多太神社など。
3日間とおして私以外は皆さん熱心で、よい句も作られた。東京勢はその上、1日早く福井入りをして、永平寺も吟行するという熱心さである。
栗田先生は風邪気味で3日間私達に付き合っていただき大変だったと思う。
以下は吟行模様と句会の1句。
句会の1句 |
|
|
|
茹で上げし筍匂ふ朝の市 |
鈴木みすず |
|
竹の皮舞ひ落つ鄙の無縁墓 |
武藤光晴 |
形代の一つ後れて瀬を急ぐ |
中野一灯 |
|
夏落葉散る古九谷の窯場跡 |
喜地庸子 |
丈低き山紫陽花の古窯跡 |
野島秀子 |
|
竹落葉降り継ぐ九谷古窯跡 |
豊田紀久子 |
水まんじゅう啜り朝市のぞきけり |
井沢陽子 |
|
解毒丸奥越に買ふ半夏生 |
倉田信子 |
提灯を下げて夏越の列に入る |
国枝洋子 |
|
笹飾り七間通りのまんじゅう屋 |
長谷川郁代 |
松蝉の雨に鳴き止む古窯跡 |
若山智子 |
|
形代を撒く大川の深濁り |
国枝隆生 |
白提灯かざし形代見送れり |
長江克江 |
|
イトヨ見る白つめ草に膝そろへ |
都合ナルミ |
青梅雨のこほろぎ橋に下駄の音 |
平松公代 |
|
青しぐれこほろぎ橋で待ち合はす |
栗田せつ子 |
あぢさゐに雨しとどなる古窯跡 |
栗田やすし |
|
(順不同) |
|
チングルマ句会入笠山吟行(18.6.12-13)
チングルマ句会も高齢化してもう高い山に登れなくなってきており、里山級になってしまっている。今年はゴンドラを使ったお手軽登山と言うことで、総勢28名で入笠山を目指す。
1日目は馬籠、妻籠吟行。今回は千草句会の方も参加しており、一緒に歩いて、かって福永さんとこの馬籠峠越えをしたことを思い出しながら、一緒に歩いた。その福永さんはもういない。
馬籠、妻籠とも今は燕の巣作りの時期であちこちで燕の子が見られた。1日目はいつもの通り、名古屋市民おんたけ休暇村で宿泊。句会を行った後、サッカーを見たが、負けて気分悪く寝る。
2日目は入笠登山、入笠湿原のハイキング派と麓散策派に分けて登山。6月の湿原はまだ花が豊富ではなかったが、結構楽しめる。ここはスズランの群生が有名で期待していたが、今年は開花が遅れてまだわずかに小さな花を付けただけ。頂上からの展望はあまりきかなかったが、雨が降らなかっただけよしとする。今年も休暇村の斉藤さんに大変お世話になった。
なお今回入笠山吟行で見た花を思いつくままに書き連ねると、木天蓼、九輪草、舞鶴草、アマドコロ、午前橘、鈴蘭、キジムシロ、小梨、延齢草、白花蛇苺、褄取草、ガマズミ、馬の足形、スダヤクシュ、三輪草、筆竜胆、紅花一薬草等々。
以下は吟行模様の写真と句会の1句。
句会の1句(順不同) |
|
|
いくたびも岩を打ちつつ男滝落つ |
岩田啓子 |
|
五輪塔囲む植田の水鳴れり |
小木曽フジヱ |
朴青葉十枚重ね売りにけり |
河西いくよ |
|
大岩をなぞりて落つる男滝かな |
さとうあきこ |
烏麦生ゆる水車の筧かな |
高橋孝子 |
|
御岳は森の匂ひよ梅雨の月 |
つのだひろこ |
燕の子飛んでよろめく一番子 |
新野芳子 |
|
門川引く螢の蜷の水槽に |
長谷川雅子 |
藤村の墓の辺に摘む夏わらび |
溝口洋子 |
|
出し抜けに馬籠峠の夏鶯 |
磯田秀治 |
釣忍赤き鼻緒のねずこ下駄 |
磯田なつえ |
|
男滝より女滝への道えご散れり |
加藤裕子 |
荒々し岩も砕く男滝 |
河野幸子 |
|
高札の掟の多し日雀鳴く |
谷口悦子 |
老鶯や馬籠峠の石畳 |
石川紀子 |
|
夏草を刈り終えし香や墓に満つ |
井上靖代 |
草叢へ轢死の蛇を移しけり |
宇田鈴枝 |
|
木曽山中男滝女滝の響き合ふ |
野口ゆう子 |
篠の子の生ふる古道や子規の句碑 |
宇野美智子 |
|
風入れや妻籠の宿の白土塀 |
牧啓子 |
吊し売る麦藁細工や青田風 |
中山敏彦 |
|
ぎしぎしへ水車の飛沫飛びつけり |
坪野洋子 |
夏燕石置屋根の曲物屋 |
山本悦子 |
|
菊姫の墓は路傍や濃あぢさゐ |
谷口千賀子 |
木曽の水引くつくばひに浮いて来い |
国枝隆生 |
|
軒並に燕が育つ妻籠宿 |
中根多子 |
黄菖蒲や姫ら主従の五輪塔 |
山下智子 |
|
|
|
桑名・弥富吟行(18.5.22)
「伊吹嶺」全国俳句大会に出席した東京勢3名と桑名、弥富の金魚田の吟行。
日頃、東京へ行くたび東京の菊坂句会の皆さんにはお世話になりっぱなしのため、今日は皆さんと吟行に案内することになった。参加者は東京勢と我々地元勢5名(栗田せつ子さん、若山智子さん、坪野洋子さんと我々夫婦2名)の8名。
桑名は最もポピュラーなコースを回った。海蔵寺(薩摩義士の墓がある)、春日神社(誓子句碑がある)、九華公園(旧桑名城址)、七里の渡し跡、船津屋のかわうそ句碑である。丁度今は花の時期の端境期で見るべきものがなかった。わずかに楝の花が咲き出したばかりであった。
昼食は泉鏡花の小説の題名の「歌行灯」。花街の間口の狭く鰻の寝床の老舗。
午後は智子さんの案内で金魚の糶市の吟行。私も初めての金魚田で新鮮であった。金魚の競り市見学の後、弥富駅までゆっくりと金魚田の吟行。但し私は俳句の方は全然駄目。
最後は名古屋駅で小句会。
東京の皆さんは全国大会から3日間ぎっしりの行事でお疲れになったと思うが、天候に恵まれてよかった。以下は吟行模様の写真と名古屋での句会の各一句。
今日の一句 |
|
札とんで糶の小金魚逃げ惑ふ |
武藤 光晴 |
糶声に蘭鋳大き目をむけり |
中野 一灯 |
石碑たつのみの渡しや花みかん |
喜地 庸子 |
渦をなす金魚へ飛べり糶の札 |
坪野 洋子 |
金魚糶る水場に匂ふ花蜜柑 |
国枝 洋子 |
花街の朱泥の壺に浮いてこい |
若山 智子 |
花楝咲き初む濠の潮の香に |
国枝 隆生 |
東京の人金魚田に顔映す |
栗田 せつ子 |
箱根吟行(18.4.4〜5)
4月の菊坂句会は箱根で吟行するをお聞きし、かねてからお誘いを受けていたので、妻と一緒に参加。総勢7名。
新宿駅集合の前に喜地さん、一灯さんと明治神宮を散策。といっても参拝するのでなく、神宮御苑(日本庭園)に行く。神宮になる前は井伊家などの下屋敷の庭園だったらしく広大な園内で、特に花菖蒲が見所だそうだ。今日は菖蒲の芽が出ている程度。
栗田先生の仕事の関係で箱根の旅館には19:30に到着。この旅館は明治16年創業で、孫文、竹久夢二なども投宿。今も孫文の間が残っており、数年前、「伊吹嶺」の同人総会で宿泊したことがある。
食後早速句会。皆さんバラバラに集合したので、最初は5句持ち寄りで句会。それでも皆さん今日の嘱目吟で揃えておられた。スタートが遅かったこと、栗田先生がお疲れだったこともあり、第2回は我々メンバーだけで第2回目の席題も含めた5句持ち寄りの句会。結局終わったのは夜の2時。
翌日は吟行日和と言いたいところだったが、土砂降りの雨。それでも仙石原の広大な末黒野、湿性花園を散策。昼食を兼ねての句会は皆さん熱心で、良い句を出されていた。
そのあと大湧谷へ行こうとしたが、霧がすごいとのことであきらめ、箱根関所跡を見て帰る。箱根湯本での解散間際にもう1回句会。それでも皆さん熱心に句を出され、充実した2日間であった。運転していただいた光晴さんご苦労様でした。また菊坂句会の皆さんありがとうございました。
以下は吟行模様と参加者の1句。
吟行の1句 |
|
靄うすく流るる湖や山桜 |
中野 一灯 |
友を待つ夜の駅舎や初つばめ |
武藤 光晴 |
蕗味噌や強羅の宿の朝茶粥 |
石原 筑波 |
花散るや埋めもどされし関所跡 |
喜地 庸子 |
春寒し関所に吊すおどし面 |
国枝 洋子 |
孫文の間の玻璃戸打つ花の雨 |
国枝 隆生 |
縦横に水の流れや水芭蕉 |
栗田 やすし |
法華寺、秋篠寺吟行(18.3.22)
新年俳句大会での浅田先生の講演に非常に感銘を受けたため、みんなで秋篠寺に行きたいとの意見一致による吟行。あいにくと天気予報は当たり、法華寺に着いてまもなく雨になる。法華寺から秋篠寺までの野道の散策は中止。
法華寺はいま春の国宝十一面観音の御開帳時期。私は初めて見たが、思ったより小さな観音像。木像造りが天平時代の古さを思わせず。今でも艶やかな彫りがはっきりと見える。
秋篠寺はもう何回行ったのだろう。毎回感動を新たにした句を作ることは難しい。それでも句会では皆さん良い句を作っておられた。本堂脇の木蓮は蕾が大きく膨らみまもなく咲き出す気配。また浅田先生が見かけた松坂慶子も会うことが出来なかった。
今日は行く場所が限られており、細見先生が見られた畦焼も見ることが出来なかった。以下は吟行模様の写真。但しカメラレンズの一部に花粉が着いたのを知らないで撮していたので、右側がピンぼけになっているのを帰ってから気づいた。ということで今日も写真の出来はよくない。また俳句は他の句会に出したいとのことでこのHPには載せられない。
蒲郡吟行(18.3.2)
この日は蒲郡句会の定例日。あわせて蒲郡句会で武山愛子さんの句集『彦星』上梓のお祝いも兼ねる。名古屋から4名参加に加え、総勢16名の参加。病気だった高橋ミツエさんも元気になられた。
最初は竹島海岸での散策。ここは思ったより桜貝が多く打ち上げられている。場所をラグーナ蒲郡に移る。今日はウインドサーフィンの大学対抗大会が行われていた。ラグーナのレストランで昼食後、商工会議所で句会。句会では桜貝、足湯、初雲雀、サーフィンが多く出された。
以下は吟行模様と句会の1句。
句会の1句 |
|
|
|
|
桜貝打ち上げ打ち引く波間より |
高橋治子 |
|
春北風に首つき上げてかもめ舞ふ |
金原峰子 |
裸木にサーファーのもの干されたり |
長崎真由美 |
|
海陽学園開校近く下萌ゆる |
小田和子 |
豆ひひな縫ふや五色の糸束ね |
小田二三枝 |
|
翔つ気配みせて帰心の鴨の群 |
内田陽子 |
開校の突貫工事榛の花 |
市川正一郎 |
|
桜貝さがす傘寿の杖の先 |
岡部幸子 |
さくら貝濡れたるままに卓の上 |
武山愛子 |
|
句集祝ぐ春乾杯のロゼワイン |
安藤幸子 |
空の青海の青さに初ひばり |
国枝洋子 |
|
春光の沖に風車の回りをり |
高橋ミツエ |
強東風に乗り出すサーファー波尖る |
牧野一古 |
|
風光る貝殻を踏む楽しさに |
国枝隆生 |
蒲郡の海の明るさ桜貝 |
中川幸子 |
|
浜辺より沖が明るし鳥帰る |
鈴木みや子 |
常滑吟行(18.1.29)
新年俳句大会に名古屋で宿泊したインターネット句会の仲間と常滑吟行に出かける。東京から3名(庸子さん、一灯さん、光晴さん)、金沢からけいさん、地元から4名の総勢8名。
寒波が続いている今年にふさわしくない暖かい四温晴。常滑の窯場散策のAコースをゆっくり吟行。およそ4時間かけて回る。私は10年ぶりぐらいなので、常滑の変貌ぶりに驚く。ここも昨日の浅田先生の講演どおり、細見先生が歩いた風景は失われている感じ。
常滑の朱泥に散りて竹落葉 綾子
の風景はどこにあるのだろうか。
昼食は金山句会のKさんのお薦めで「たに川」で、ここでゆっくりと句会もさせていただけた。
以下は吟行模様と当日句。
当日吟行句 |
|
冬日濃し白壁しるき船問屋 |
伊藤 範子 |
陶工の土管に咲かす水仙花 |
坪野 洋子 |
窯に噴く塩舐めてみる春隣 |
国枝 洋子 |
破甕を埋めし築地や冷えわたる |
武藤 光晴 |
春隣窯場にパンを焼く匂ひ |
中野 一灯 |
常滑の小道山茶花明りかな |
喜地 庸子 |
春隣土管坂押す乳母車 |
辻江 けい |
大甕に金魚閉ぢ込め厚氷 |
国枝 隆生 |